引き寄せの法則は森羅万象の法則として適切に機能している。これは間違いない。実在する法則だ。
しかし、多くの人はこの法則を「願えば叶う魔法のランプ」と勘違いしている。
まずはこちらの記事をご覧いただきたい。
内容自体は他の「引き寄せの法則」解説サイトよりよほど正鵠を射ている。
だが、引き寄せの法則を信じている読者に対して、変に配慮しているというか、こんな語り口じゃどうしようもないのだ。
「引き寄せの法則」の本質について語る。
これらの本は、一部の読者にかりそめの希望を抱かせた罪深い本だ。本に書いてある通りのことを実践して願いが叶うなら、あなたは今頃、世界の大富豪の一人に名を連ねている。しかし実際はそうではない。引き寄せの法則は存在するはずなのに、なぜあなたの願いはかなわないのか。
最近ホットな心理学者アドラーは、引き寄せの法則を端的に説明している。
人は結局、潜在的な願望通りの自分になっている。
例えば「真面目に生きていれば彼女ができる」と考えている男がいるとする。
だが、一向に彼女ができる気配がしない。
その男は「最後に報われるのは真面目な人」と固く信じている。
彼の状況を「引き寄せの法則」の内容に従い、解釈してみよう。
彼は、彼女が欲しいという願望が弱い。だから彼の真面目さは女性に認められないし、彼女がもできない。
この説明にフムフム言っているならば滝に打たれた方がよい。 滝まわりは危ないからお坊さんの言うことをよく聞くんだぞ。
それでは、アドラー流にこの誠実な不幸者を解釈してみよう。
彼女ができないから、彼は真面目に生きているのである。真面目だから彼女ができない、という論理が無いと、彼の精神は崩壊してしまう。彼にとって真面目であることは、彼女ができないことへの『説明』なのだ。
どうだろうか。彼女ができないから、彼女ができない理由を拵えるために、彼は真面目になろうとしているだけ、という論理が浮かび上がってくる。つまり、彼は本質的に「真面目」であることを望んでいないということになる。
結局のところ、引き寄せの法則とは何なのか。
引き寄せの法則とは「万物を支配する物理法則」が宿った祭壇である。願いを叶えたいならば、祭壇のルールに服従し、適切な贄(にえ)を捧げなければならない。
適切な贄(にえ)、がポイントだ。
「真面目な非モテくん」である彼の場合、最終的に良い女を捕まえるのは真面目な男だの、真面目なものは最後に報われるだのと考えることを止め、『俺が本当に望んでいることは、真面目な男になることではなく、彼女のいる男になることなんだ』と気づく必要がある。
そこではじめて、適切な贄を捧げる用意が整う。「真面目さ」を理由にして逃げるのをやめた彼の裡には、彼女ができない原因とまっすぐ向き合うマインドセットが打ち込まれている。
彼は女性へアタックするだろう。真面目な男はどうだこうだと言っていた頃と同じように、果敢にアタックする。
そして、真面目な男はどうだこうだと言っていた頃と同じようにフラれたり、人格否定されたりするだろう。
彼は深く傷つくだろう。
しかし「僕が真面目すぎるからモテないんだ」と言い訳をしなくなった彼は、その原因の分析と改善を適切に積み上げていくことができるようになる。
つまり、彼女を作るために正しく傷つき、適切な苦労を積み上げている。これこそが、まさにこれこそが適切な贄(にえ)だ。
潜在的な願望に正直になり、願望実現を妨げている原因と向き合うこと、このプロセスは祭壇のルールへの服従だ。
好きになった女性を振り向かせる魅力をまとうために負った心の傷、これは祭壇への贄(にえ)だ。
「トイレ掃除は欠かしませんし、募金もしています。お金を大切にする意識を育むために、高い財布を買い、諭吉の頭を揃えて入れました。なので、神様、どうかわたしをお金持ちにしてください」
こんなことを考えている人間がお金持ちになれるはずがないのは、論理的に考えても明らかである。なぜなら、トイレ掃除とお金持ちになることの間に、因果関係がないからだ。募金も、高い財布も、諭吉の入れ方も、それだけを一生懸命やったところで、お金持ちにはなれない。だが、引き寄せの法則の本に言わせれば、こう考えることでお金持ちになれる。馬鹿みたいだと思わないか?
お金持ちになりたければ、お金を稼ぐ能力を磨く必要がある。稼げるところに自分の身をおく必要がある。自分の能力が活かせる市場や環境を探し出す旅に出る必要があるし、その市場や環境でお金を稼ぐための取り組みをしなければならない。
引き寄せの法則を、「願うだけで叶う法則」と捉えるからおかしなことになる。そんなヌルい法則ではない。むしろ、「引き寄せの法則」ほど残酷かつイーブンな法則はない。
引き寄せの法則とは、叶えたい願望に対して必要な資源・エネルギーが、綺麗にハマった時に光を放ち、願いを叶える祭壇のことである。資源やエネルギーを綺麗に揃えて祭壇へハメ込むには試行錯誤が要る。資源、エネルギー、試行錯誤、これらは祭壇への贄である。祭壇へ捧げた贄が不適切ならば、望ましくない結果を出力したり、何も起こらなかったりする引き寄せの法則という祭壇……。
引き寄せの法則という祭壇は、世界の全ての現象は物理的な性質をはらんでいる。人の感情もまた、ニューロンの発火現象から生まれるものであり、物理現象である。脳内に起こる小さなスパークは感情を形成し、我々の身体を動かし、世界の物理的な秩序を乱す入力装置になる。
個体が生む小さな歪みは、バラフライ現象よろしく大きなうねりとなり、世界の在り方を変える。世界は、膨大な演算の結果をライフイベントとして我々の日常に出力する。
あなたが願いをかなえたいならば、宇宙の物理法則に従って行動しなければならなければならない。ここでいう宇宙とは、スピチュアルな表現ではなく、実際に存在する宇宙のことだ。
何を供物としなければいけないかは、膨大な物理計算の演算装置である宇宙のみぞ知る。あなたにできることは、欲しい演算結果を宇宙が出力するまで供物投入し続けることだけだ。そして、贄(にえ)を捧げ続けるエネルギー源こそが何がなんでも叶えたいという強い想いである。
風のない密室で10gの小石を10m先に動かさないと部屋から出られないとする。あなたが部屋を出たいなら、石を持ち、10m歩き、その場に小石を置かなければならない。どれだけ思考を働かせ、強く願い、精神を磨こうが、石はピクリとも動かない。そんな力学はこの密室に存在しない。あなたが部屋を出たい場合、まず小石を手に取らなければならない。
望みを叶えたいならば「しなければいけないこと」を適切に捉え、適切な行動に移らなければならない。資金と時間、人脈、労力、あらゆるものを適切に投下しなければならない。現実に接続した思考のもとで試行錯誤しなければ願いは叶わない。
「引き寄せの法則」についてまとめる。
- 引き寄せの法則は実在する。しかし、魔法のランプではない。引き寄せの法則とは、万物を支配する物理法則によって作られた祭壇のことである。
- 「思わないと、願いは叶わない」について適切に翻訳すると、祭壇を光らせるための試行錯誤に耐えられるだけの情熱がないと、願いは叶わない。
宇宙に向かって拝み倒すのをやめて、欲しいものを具体的にリストアップして、計画を立てて、行動しましょう。さすれば、あなたの願いは叶うであろう。